■血管がボロボロになり心筋梗塞や脳卒中も
腹囲などの見た目でわかる体形だと注意を促しやすいのだが、痩せメタボだと見落とされることもある。それゆえ、重篤な心血管疾患のリスクがあっても気づきにくいというわけだ。「腹囲77cm基準」は、こうした疾患のリスクの見逃しが45%程度まで下がると報告されている。
「痩せメタボの人に共通するのは、運動不足で栄養が偏っていることです。若い女性でも痩せメタボの人は案外多く、彼らに食事の内容を聞くと、甘い菓子パンや甘い飲み物が食事代わりになっているなどで、糖分、脂質の摂取過多が気になります」
中高年以上の主婦でも、夫や子供たちの好みに合わせて、揚げ物などの脂っこいものや、甘いものを一緒に食べるといった糖分・脂質過多の食事を取っている人が多くいるのだそう。
「こうした食事を取り続けていると、栄養のバランスの悪さから筋肉量が落ちます。糖や脂肪を代謝してくれる筋肉の量が少ない人は、内臓脂肪がたまりやすくなり、“痩せメタボ”になっていくのです」
メタボの人の血管の中をイメージしたものが上の図だ。イガイガしたツノのある血中の脂肪が、細い血管の中を流れながら、血管壁を傷つけてボロボロにしていく。
「これが網膜の血管を傷つけると失明し、腎臓の血管が傷つくと透析をすることになり、神経に栄養を与える血管が傷つけられると足の神経障害となって足の切断につながります」
そして血管壁にたまったコレステロールにより動脈硬化、さらには心筋梗塞や脳卒中をも招く。
だからこそ、早い段階で気づいて予防に努めることが推奨されているわけだが、今回の新基準「腹囲77cm」により、該当者が増えると、これまで油断をしていた人も、これからは注意が必要になると予想される。
「今回の新基準値の提案により、多くの人が該当することになり驚かれるかもしれませんが、逆に早期に気づいて改善できる機会なのだと捉えられると、今後、心血管疾患のリスクが減少するきっかけとなるのではないかと思います」
改めて、栄養バランスのとれた食事と有酸素運動などの生活習慣を見直して、メタボを予防、改善しよう。