老後の出費がどれくらいになるか、不透明な昨今。ある程度、保障内容をスリムにしてもいい家族構成になったら、保険で家計見直しをするチャンスかもしれない。
「家賃、通信費、食費、光熱費に並ぶ固定費として、家計を直撃するのが保険料。子どもの教育費がかかる時期は、働き手になにかあったときのために保障はある程度必要です。しかし、親が50歳くらいになって子どもの自立が見えてきたなら、死亡保障も減らして身軽になっていいでしょう。その際、選択肢に入ってくるのが共済です。50歳前後となれば、いざ見直しをしようと思っても保険料は高額。共済は年齢や性別の区別なく一律で、2,000〜5,000円程度の安価な掛金で、しかも幅広い保障が受けられるんです」
そう語るのは、All Aboutマネーガイドの平野敦之さん。年金減や消費税増税など負担増に備え、出費を減らしたい方には、家計の見直しの“切り札”にもなりうるのが共済だという。
「共済では、生保・損保会社の『保険料』を『掛金』、『保険金』を『共済金』というように表現の違いはありますが、相互扶助という仕組みの面では、どちらも違いはありません」
営利団体である生保や損保は全国から契約者を募ることができる。ただし、非営利団体である共済は、加入に際して居住地域や一部の企業の社員、組合員に限るなどといった制限がある。
「しかし都道府県民の共済は、その都道府県に居住していたり職場があれば加入できるし、佐賀県、高知県、福井県など一部存在しない所もありますが、多くの都道府県にあるので、対象者は多いはず。全労済やコープ共済は全国展開しており、それぞれ数百円の出資金を出して組合員となれば、加入することができます」
今回は加入者が多い都道府県民共済と、全労済(こくみん共済)、コープ共済について、平野さんとファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに、解説してもらった。
「都民共済は、ブライダルの割引、こどもの日の兜やランドセルの割引など、付帯サービスがあります。全労済は自動車保険や火災保険、地震保険などに相当する共済があるなど、カバー範囲が広い。コープ共済は女性向けの商品や、100万円、200万円の一時金が出るがん特約があるのが特徴です」(風呂内さん)
風呂内さんは、これら各共済に共通するメリットがあるという。
■高齢で加入しても、掛金は上がらない
「各共済によって多少の違いはありますが、一部商品を除き1カ月の掛金は2,000〜5,000円ほどです」(平野さん)
生命保険の場合は、医療保険でも死亡保険でも、5歳ごとに年齢を区切るなどして、加入時の年齢が上がるごとに保険料が高くなる構造になっているが……。
「共済は年齢群団方式といって、加入時の年齢や性別の区別なく、一律の掛金であることが大きな特徴です。20歳前後の若い人からすると“なんで50歳と同じ掛金なんだ”と不公平感を抱くかもしれません。ある程度の年齢、たとえば50歳くらいで新たに保障を受けたいというのなら、掛金は安く済みます」(平野さん)
高齢で加入するほどおトク感が増すということだ。
「都民共済の『総合保障型』の掛金2,000円の内容は、生保なら特約もありますので、50歳女性で1万円くらいになりますね」(風呂内さん)
■加入条件が緩和されている
自分では健康なつもりでいても50代ともなれば、だいぶ体にガタが来ている。血液検査の数値を見れば、自覚はなくとも、基準値をオーバーしている項目もあるはずだ。
「この年代で保険に入ろうとすると、血圧が高く、医師の診査を求められることもあります。保険は健康状態が重要で、契約に条件がついていて加入できないと、保険料が高い“緩和型”を選ばざるをえないケースもあります。いっぽう、共済は告知義務はありますが、医師の診査は不要で加入が簡素化されているケースが多いです」(平野さん)
全労済のホームページには「今まで高血圧の治療中を理由にご加入を諦めていた方も加入しやすくなりました!」とある。
「’16年10月に制度改定してから、一定の条件をもとにお引き受けできるようにしています」(全労済広報室)
コープ共済の広報部もこう語る。
「高血圧の場合、高血圧が原因で過去5年間に入院していない、一定の数値でコントロールできているなどの加入条件を満たせば加入できる制度があります。商品やコースを問わず、加入できる間口を広げています」
都民共済担当者はーー。
「個々のお話をうかがって、相談しながら、条件をつけさせていただくこともあります」
いずれも加入となった場合、病気ではない人と同一の掛金となる。
さまざまなメリットのある共済。もちろん、共済にも注意点がある。
「掛金と同様に保障内容もずっと変わらないと考えている人が多いようです。しかし、注意が必要です」
と生活マネー相談室の八ツ井慶子さんは言う。確かに都民共済の「総合保障4型」を見ると、同じ掛金なのに、18〜65歳までの病気による病気入院保障額は1日あたり9,000円なのに対し、熟年4型に移行すると、65〜80歳で5,000円、80〜85歳では0円になる。
「高齢期になると保障内容が薄くなります。高齢になっても手厚い医療保障を求めるのなら、共済ではなく生命保険会社の終身の医療保険のほうが適しているでしょう」(八ツ井さん)
平野さんはこう語る。
「共済は掛金が安く、割戻金がある分、貯蓄に回すお金もできます。1カ月内で一定額を超えた医療費が返金される高額療養費制度という公的制度もあります。ある程度まとまった医療費を貯蓄できれば、80歳で保障が薄くなった共済を、継続する必要はなくなるかもしれません」(平野さん)
保障内容が薄くなる分は、安い“掛金”で浮いたお金でまかなう。貯蓄しておけば、老後のあらゆる出費にも回せるという。共済のメリット・デメリットを考慮して、今加入している保険の見直しを考えてみては。