“おひとりさま”は、元気なうちは、自由気ままにシングルライフを満喫できるが、問題は年をとってからだ。万が一、病気で倒れて病院に入院したとき、「誰が身元保証人になってくれるのだろうか」「死んだ後は誰が手続きをしてくれるのか」――と、将来への不安は尽きない。
そんなニーズに応えるために、最近、安否確認や身元保証、死後の手続きなどの代行をパッケージで提供する民間サービスが広がっているが、『ひとり終活』(小学館新書)の著者で、シニア生活文化研究所所長の小谷みどりさんはこう注意を促す。
「身元保証や死後の手続きを代行する高齢者のサポートサービスは、費用が想定以上にかかったり、預託金を流用されるといったトラブルに巻き込まれたりすることもあるので注意が必要です。たとえば、ある団体に預託金として約100万円支払ったが、事務経費と身元保証費のみに充てられ、葬儀や遺品の整理など、『死後の手続き』は別料金がかかることを知り、解約したいと思っても返戻金がほとんどなく、『損をした』という声をよく聞きます」(小谷さん・以下同)
頼れる親族が身近にいない場合は、まずは自治体で実施しているサービスを、目的別に個別に申し込んで使うと、費用も安く済むという。
そこで高齢になり必要になってくるサポートの中から、「身元保証」について小谷さんに解説してもらった。
■入院したときの身元保証人は友達でもなれる
おひとりさま生活でピンチの1つが、病院に入院してからのこと。手続きの際、病院側から「預かり金」と「身元保証人」を求められるケースがあるからだ。
「身元保証人は親族しかなれない、と思い込んでいる人が多いのですが、それは間違いです。入院時の身元保証人には友人でもなれます。さらに、身元保証人がいないことで入院を拒否することは、厚生労働省も『医師法に抵触する』という通達を昨年4月に出しましたので、もし、拒否されることがあれば、すぐに自治体や地域包括支援センターに連絡しましょう」
また、賃貸暮らしのおひとりさまは、賃貸住宅や老人ホームに入居する際に「連帯保証人」という大きな壁が立ちはだかる。
「入居者が家賃などを支払えなくなったときに代わりに支払う義務を負うのが連帯保証人で、2人以上必要とするケースもあります。配偶者やお子さんがいないとき、60歳以上の人(要介護、要支援を受けている60歳未満の人)は、高齢者住宅財団の『高齢者家賃債務保証制度』と契約している賃貸住宅に引っ越す方法があります」
2年保証の場合、家賃24カ月分の35%相当を保証料として財団に支払う。
判断能力はあるが体が不自由になったとき、見守りや財産管理を行ってもらう「任意代理契約(生前事務委任契約)」の制度を知っておくと安心。
「お願いする相手は、子どもや親族でなくても友人や司法書士、行政書士、弁護士などの専門家でもいい。判断能力があるうちは『任意代理契約』でサポートしてもらい、判断能力が低下してきたら『任意後見制度』に移行できるように2段構えの備えが理想です。任意後見制度は認知症になったときに備えて、財産管理やさまざまな手続きを代行してもらう契約を法的に結ぶ制度。ただし、認知症にならなければ無駄になるので、社会福祉協議会の担当者などと相談しながら決めましょう」
任意代理契約は、公証役場で作成した公正証書でなくても契約は結べるが、トラブルを避けるためにも、任意後見制度に移行することを前提にして、公正証書で、両方を一緒に契約する方法が一般的という。セットで契約する際、公証役場に払う手数料は約5万円。このほかに、代理人との間での委託料が月々1万~2万円程度かかる。さらに任意後見制度に進むと、契約時に十数万円から20万円の手数料を支払い、数万円程度の報酬を後見人に毎月支払うことになる。それにプラスして任意後見人を監督する任意後見監督人への報酬も月額1万~2万円かかってくる。依頼主の資金から支払われるので本当に信頼できる相手にお願いすることが大切だという。