新型コロナウイルスもやや落ち着きを見せた今、親の安否確認を兼ねて久しぶりの帰省を考えている人も多いはず。せっかくだからこの機会に、実家の片づけに着手してみては? でも実家に帰って、いきなり片づけを始めると「勝手に触らないで!」と、迷惑がられてしまうことも。そこで、親のプライドを傷つけず、前向きに片づけてもらう方法、教えます。
「頼んでもいないことをされるのを快く思わない親もいます。特に物のない時代に育った人こそ、使えるものを捨てるのはいけないと思っている。片づけを始める前に、親の暮らしぶりや健康状態を知ることから始めて、心をつかめば作業はスムーズに進みますよ」
そうアドバイスするのは、5,000件超の片づけの実績を持つ、美しい暮らしの空間プロデューサーの安東英子さん。自身も実家の片づけに苦労した経験がある。
親が高齢になって足元がおぼつかない、物忘れが目立ってきたなど、目に見えて心配事が増えてきたときこそ、危険箇所をチェックしながら片づけをしよう。
「真っ先にキッチンに向かって掃除を始めるのはNG。ガスコンロの周りに調味料や調理器具など置きっぱなしにしていないか見て、『ここに置くと危ないよ』と言いながら置く場所を変える。賞味期限切れの調味料やレトルト食品などを見つけたら処分するようにしましょう」(安東さん・以下同)
このほかにも、物に足をとられて転倒することはないか、家の中の動線などにも注意したい。しかし、2日か3日程度でできることは限られているので、一度に多くの場所を片づけようとしないで、“少しずつ”がポイント。
「実家で残した自分のものから捨てれば、親は嫌がりません。たとえば、部屋に置きっ放しの洋服、マンガ本や教科書、使わない文房具、ぬいぐるみなどはゴミ袋に入れて、とっておきたいものは箱に入れて自分の家に持ち帰る。それだけでもかなり片づきます。2日目は洗面所の掃除から始めるのがおすすめです。歯磨きや洗顔のついでに引出しや戸棚にあるものも全部取り出して、古い洗剤などは捨てる。洗面ボウルや鏡を磨いてピカピカにすると、親も喜んで、片づけに前向きになってくれますよ」
ひとりで勝手に進めるのではなく、親と一緒にやること。その際、つい口をすべらせて、かえって機嫌を損ねてしまうこともあるので、“言い方”には要注意!
そこで、片づけの最中に言ってはいけない“NGワード”を教えてもらった。
【1】こんなに汚れているのが見えないの?
「高齢になると白内障が進んで、視力が低下する人が増えてきます。汚れが見えなくなっているかもしれないので、『こんなに汚れているのが見えないの?』とは言わないで、体調を気にする言葉をかけてみてください」
【2】昔はこんなにだらしない人じゃなかったのに……
体力が衰えてくると、大きな荷物を片づける気力がわいてこないこともある。
「昔はこんなにだらしない人じゃなかったのに……」とは言わずに、「ケガをしたら大変だから代わりに片づけてあげる」などと、心配しながら片づける。やさしい気持ちに親も素直に応じようと心を開いてくれる。
【3】やることが遅いから関わらないで
「作業の最中に、畳の上に並べたものを眺めて、思い出にふけってしまい、つい手が止まってしまう人もいます。『やることが遅いから関わらないで』と、叱りたくなりますが、どうしようもないことまで責めないように」
【4】「ここに物は置かないで」と言ったでしょう
上から目線の物言いも逆効果。物の置き場所で意見が食い違ったとしても、「『ここに物は置かないで』と言ったでしょう」ではなく、「ここに置くとつまずいて転ぶと危ない」と、言い換えて片づけるのもコツ。
【5】寝たきりにならないうちに片づけておいて
親自身も体の衰えから片づけられないことを自覚しているので、「寝たきりにならないうちに片づけておいて」と、不安をあおる言葉も控えよう。
「親は年とともに頑固さが増していきますので、一筋縄ではいかないものです。子どもの側が我慢することばかりだと思うでしょうが、もめたっていいんです。部屋がキレイになったことが目に見えてわかると、片づけに前向きになれます。快適な生活空間が待っているという信念を持って、あせらないで取り組みましょう」
片づけの先に「いつまでも安心した生活を送れるように」という、共通の目標を持つと、はかどりやすい。久しぶりの帰省を機に、一緒にトライしてみよう!
「女性自身」2020年7月21日号 掲載