10月5日「住宅ローンの完済年齢が上昇している」という調査結果が発表された(日経新聞)。住宅ローンを’20年度に契約した人の完済予定年齢は平均73.1歳。’00年度の68.3歳と比べて、20年間で5年も遅くなっている。住宅ローン利用者が60歳時点の予定残高も、’00年度の利用者は平均約700万円だが、’20年度は約1,300万円に増加。老後に“ツケ”を回す傾向が見て取れる。その原因を、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。
■住宅ローン返済の理想は50代まで!
原因としては、住宅を買う年齢の上昇が挙げられます。住宅の取得年齢は、’00年以前は37歳前後が多いのですが、’13年以降は40代が目立ちます(’19年・国土交通省)。
また、ローンも長期化しています。国の基準を満たした長期優良住宅に限られますが、’09年から「フラット50」という返済期間が最長50年の住宅ローンが提供されています。一般の35年ローンでも、みずほ銀行は最長80歳まで、ソニー銀行は最長85歳までに完済すればよい決まりです。
銀行も利用者も、定年を過ぎた年齢だと承知のうえで、繰上げ返済で早期完済を目指しながらも、最終的には「退職金での完済」を想定しているのでしょう。
銀行は、年齢にかかわらず完済されると利益を確保できます。ですが、利用者は、退職金を住宅ローンの返済に使ってしまうと、老後資金が不足する大問題です。
さらに、コロナ禍で収入の減少や、リストラなどで収入がなくなった方、冬のボーナスが減額や「今年は出ない」という方も多く、いま、住宅ローンの返済に困る方が増えています。そんな方はすぐ銀行に相談して、毎月の返済額を抑えるなどの対策をとりましょう。
ただ、その分返済期間が延び、返済総額も増えてしまいます。元々の計算とは違い、完済が定年以降にずれ込む方もいるでしょう。あるいは、勤め先の倒産などで退職金の減額や出ない方もいて、退職金で住宅ローンが完済できないケースも考えられます。
そうなると、老後資金や年金から住宅ローンを返済するしかありません。高齢でも健康なうちは働いて返済できますが、病気や介護が必要になって蓄えが底をついたら「自己破産」に陥るケースも増えてくるのではないかと心配です。
当たり前ですが、住宅ローンは少しでも早く、できれば50代での完済を目指しましょう。コロナ不況は、当たり前のことができないほど深刻です。投資などにお金を回すより、「借金減らして現金増やせ」、これに尽きます。
また、ローン返済の猶予を受けた方は必ず、もう一度見直しを行いましょう。以前より楽な返済から元に戻せない方が多いのですが、そのままだと老後破綻へ一直線だと緊張感を持ちたいものです。現役世代のうちに苦労して、借金のない老後を迎えましょう。
国には、これまで景気浮揚感として住宅ローン減税を連発し、国民に住宅購入をあおってきた責任があると思います。空き家問題も踏まえて、住宅行政の今後に、きびしい目を向けたいと思います。
「女性自身」2020年11月10日号 掲載