画像を見る

連日報道されるウクライナの惨状。それを見るだけで心を痛める人が多いのに、そのやさしさに付け込む詐欺被害が増えているという。そんなウクライナ情勢詐欺について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれた――。

 

■情報は自分で調べ、嘘を見極めよう

 

たとえば、SNSを通じた義援金詐欺。戦地で血を流す女性や子どもの泣き顔など戦争の悲惨さを訴える写真が添えられ、「ウクライナのために何か支援したい」と考える方を刺激します。なかには、すぐ募金に応じる方も。

 

しかし後日、義援金を集めていた団体は実体がなく義援金詐欺だとわかっても、送ったお金は取り戻せないケースがほとんどです。

 

また、金やダイヤモンドなどの価格高騰を受け、貴金属の買取り詐欺も横行しています。

 

実際にあったケースでは、まず、寒さ厳しいウクライナに冬物衣料を送りたいと連絡が来ました。「古着でよければ」と応じると、業者は自宅まで引き取りに来ます。

 

ただ古着にはほとんど触れず「貴金属のほうが支援になる」と金やダイヤモンドを要求。「貴金属はない」と拒絶したため事なきを得ましたが、貴金属を出していたら、壊れている、時代遅れだなどと難癖をつけ、二束三文で買い取るつもりだったのでしょう。

 

さらに、日本の業者を名乗って「ウクライナ情勢によって商品が売れずに困っている。買ってくれないか」と売り込みに来るケースも。困った状況を聞くと、助けたいと思うのが人情ですが……。

 

これらはすべて「真実かどうか」が問題です。写真はニュース映像などからいくらでも合成できるので証拠になりません。

 

情報の発信元がNPO法人だとしても、それだけで信用してはいけません。NPO法人には過去に暴力団などと関係のあった団体が紛れていることも。東京都のNPO法人情報検索サイトには「NPOの信用は所轄庁がお墨付きを与えるものではない」と明記。つまり自分で判断するしかないのです。

 

では、どう見分けるか。まず、知らないところから流れてきた情報に安易に乗ってはいけません。誰かから押し付けられた情報ではなく、情報は自分で探しましょう。

 

たとえば寄付がしたいなら「ウクライナ 寄付」と検索すれば、国連難民高等弁務官事務所やウクライナ大使館、ユニセフなど正しい情報にアクセスできます。

 

いまや戦争も情報戦です。私たちも情報をうのみにせず、自分で情報が正しいかを見極めるリテラシーが求められているのです。

 

3月25日群馬県安中市で、ウクライナ在住の日本人を名乗る人からメッセージが来て、出国費用の援助を懇願され、30万円を送金しようとした人がいました。銀行職員の機転によって詐欺は未然に食い止められましたが、詐欺の手口はどんどん巧妙になっています。

 

「私は大丈夫」ではなく、どんなに注意しても、詐欺にあうかもしれないと覚悟しましょう。だからこそ、自分ひとりで判断せずに、必ず誰かに相談してください。

 

【PROFILE】

荻原博子

身近な視点からお金について解説してくれる経済ジャーナリスト。著書に『「コツコツ投資」が貯金を食いつぶす』(大和書房)、『50代で決める!最強の「お金」戦略』(NHK出版)などがある

経済ジャーナリスト

【関連画像】

関連カテゴリー: