■ビールの値上げには酒税改定の影響も
「ビールは確かに麦由来の製品ですが、製造費のうち原材料は15%程度と低く、逆に25~30%と高く占めているのは酒税です」
その酒税は来年に改定される。
ビールの税率が下がり、発泡酒は据え置き、一方で新ジャンル(その他の醸造酒、リキュール等)が大幅にアップされる予定なのだ。
「いま売れている新ジャンルは来年の値上げで一時的に売り上げが落ち込むと予想されます。そのため、いまのうちに主要商品であるビールを値上げしておくべきと判断したのかもしれません」
ビールと同じく値上げされた「竹鶴」「ジョニーウォーカー」などのウイスキーについて加谷さんはこう解説する。
「海外で人気が高い『山崎』などを国産ウイスキー最大手であるサントリーが4月に値上げしていました。世界各国の高価格に国内価格を近づける狙いがあったと思われ、他社も並んだ格好です」
酒類の値上げには、14日に147円台に突入した「円安」状態の影響もあるのではないだろうか。
「ワインなどはとくに円安に影響されます。11月解禁のボージョレは、フランスで100%瓶詰めまでされたものを輸入するので、契約時の為替レートが値上げ幅に大きく影響するでしょう」
チーズや生ハムなどのおつまみの値上げにはこんな背景が……。
「昨今、急激な経済発展を遂げているアジアなどの新興各国では、食も高級志向になり、チーズや生ハムなどの”贅沢品”の価格が世界的に上がっているんです。また、輸入量が多いチーズや生ハムは円安の影響で、さらに価格が上がっています」
このように晩酌で並ぶほとんどの食品に、値上げの影響が及ぶ。
毎日ビール1本とチーズを楽しんでいる場合、夫婦で月2000円の家計負担増にーー。
私たちが「失われた2000円」を取り戻すためには何が必要なのか。
生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんに教えてもらった。
「まずは食品の『最安値』をスマホやPCでチェックすること。全国の価格情報を扱うサイト『価格.com』では食品も扱っていますので、最安値や平均的な値段がいくらなのかを把握しましょう」
次に探すのは、プライベートブランド(PB)商品だという。
「ビール類をはじめ、PB商品でそろうものは多いので、出費を抑えるのを最優先にしたい食品の場合は積極利用するといいでしょう」
さらに、金券ショップでビール券や商品券を数パーセント程度安い値段で買い、商品をスーパーやショップで購入する方法も。
「金券ショップでの注意点は、購入する商品券などを必ず目当ての店で使えることを確かめてから買うことです」
飲み方を変えるのも一つの手だと言うのは前出の加谷さんだ。
「『ビール×チーズ』のような値上げ率の高いものではなく、価格がほとんど変わらない国産の米を使った『日本酒×おせんべい』に変えると値上げの影響が少ないかもしれません」
買い方×飲み方を工夫し、負担を最小限に食い止めて、値上げの波を乗り切ろう。