■資産家が恐れるのは経済を学んだ一般人
数学を学ぶには、加減乗除を学ぶのが始まりだ。加減乗除をより理解しやすくするために九九を覚える。英語を学ぶにも、アルファベットを知らなければならない。大文字と小文字、すべてを覚える必要がある。これが学問の始まりだ。
ところが金融や経済については、誰も教えてくれない。
どの学校でも、実際的な経済教育はしていない。理由は簡単だ。わざわざ教える必要がないからだ。文字を学べば思考が深まり、記憶も整理できるし、文書が読める。統治者にとっては、大衆が文字を学ぶことは面白いはずがない。
経済知識も同様で、経済知識が多い人は、資産家の地位を脅かす。あらゆる投資契約の中身がガラス張りとなり、株取引や銀行取引で優位に立てなくなる。しかし私は、韓国の中間層に厚みが増せば増すほど、国家の安全網が拡大し、健全な社会に発展するものと信じている。自分が他人よりもお金持ちになるとうれしいと思うかもしれないが、そのような国では政治的・社会的安全網が崩壊し、ついにはそのリスクを上層グループがかぶることになる。だから、中間層が安定しており、努力すれば誰でも中間層に入ることができる国がいい。そして結果として、富裕層が増える国がいちばんいいのだ。
そのためには、高校から実物経済の教育をし、経済用語を教えることだ。授業で用語を教えるだけでも、お金持ちになれる人が増えるはずだ。現在の学校で学ぶことのうち、経済活動の役に立ちそうなのは、会計学くらいだろう。経済学は個人の経済生活にはまったく役に立たない。
経済用語を勉強することは、若者がむやみに借金を背負うことを防ぐとともに、彼らが収入の一部を株や債券に投資して起業家精神を学ぶことに寄与する。そして彼ら若者は財産形成プロセスに参加して、誇り高く尊敬されるお金持ちになれるだろう。
すべての国民が、前記の用語リストを理解できる国になったら、どれほど素晴らしいことだろう。記者が適当な経済情報を振り回して偏向記事を書くこともできなくなるので、高値で住宅を購入したり暴落相場でカモにされることもなくなる。
まずは用語から学んで理解しよう。すべての人が金融用語を理解すれば、政治家も国民を無視することはできず、不届きな事業家がのさばることも減る。
金融知識は命に関わる問題だ。
高校の教育課程に金融教育という科目がつくられ、退職した銀行の元支店長や証券マンが教壇に立つ日が来ることを願っている。
【PROFILE】
キム・スンホ(Kim Shengho)
スノーフォックスグループ会長。韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。出版社、生花流通業、金融業、不動産業も営みながら、農場経営者の顔も持つ。韓国中央大学校ではグローバル経営者養成コースの教授も兼務。韓国と世界を行き来しながら、最近5年間で3000人あまりの事業家を養成。「社長を教える社長」として知られる。本書は、インターネット上で動画が1100万回以上再生された「伝説のお金の授業」の書籍化。2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した国民的な「お金の教科書」。
【INFORMATION】
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