経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部) 画像を見る

百貨店やコンビニ、スーパーなどで販売されるおせちが、今期は高騰しています。現在販売中の平均価格は2万9千98円(税込み)。前年より1千54円、3.8%の値上げで、値上げ幅が1千円を超えるのは3年ぶりといいます(帝国データバンク)。

 

値上げの要因は、箱などの包装資材や配送費、人件費なども軒並み上昇しているうえ、なにより大きいのは原材料費の高騰です。

 

特にイクラは、秋鮭の記録的な不漁などで27%の値上がり。また、輸入品が中心の数の子は、円安や加工地での人件費上昇で12%の値上がりです。イセエビやタイ、牛肉、タコなども価格が上昇しています。

 

ただ、なかには値下がりしたものも。輸入サーモンは昨年までの急激な価格高騰の反動か、今期は20%の値下がりです。マグロは2025年から太平洋での漁獲枠が1.5倍に広がって漁獲量が増え、15%安くなっています。2026年の正月はイクラをやめて、代わりにマグロ多めでいいのでは。

 

おせちは「まめに暮らせるように」黒豆や「養老昆布(よろこぶ)」の昆布巻きなどさまざまな縁起物を詰め込むものですが、家族で食べるなら好きなものだけでもいいと思います。

 

近年はローソンストア100で、少量パックの単品おせちが1品108円から販売され人気です。これらを利用してもいいでしょう。

 

■2025年は値上げが2年ぶりに2万品目を超えて

 

おせちの価格が物語るように、2025年は物価高に明け暮れた年でした。飲食料品の値上げは2万609品目におよび、2024年の1.6倍。値上げが2万品目を超えたのは2年ぶりです(帝国データバンク)。

 

春闘では2年連続、5%超の賃上げ達成に沸きましたが、それでも物価高の猛威が上回りました。給料の額面は上がっても、物価の影響を差し引いた実質賃金は10カ月連続のマイナスです(2025年12月、厚生労働省)。

 

いっそう家計は厳しくなり、自己破産が増えました。前年2024年の自己破産申立件数は7万6千件と12年ぶりの高水準でしたが、2025年上半期は、2024年を8%上回って推移しています(裁判所)。

 

さらに、企業倒産も増えています。2025年1~11月の企業倒産は9千380件。このままのペースだと12年ぶりに1万件を超えるといわれます (帝国データバンク)。

 

12月19日、日銀は政策金利を0.5%程度から0.75%程度に引き上げると発表しました。30年ぶりの高水準で、今後は徐々に円高に傾いていくと思います。

 

円高になると、輸入品は値下がりする可能性があり、物価高は多少落ち着くかもしれません。しかし、円高の悪影響を受ける企業は多いものです。企業業績が落ち込めば、給料は上がりません。2025年ほどの賃上げは難しいと覚悟しておきましょう。

 

2026年も厳しい家計が続きそうです。財布のひもを締め直して、家計防衛に努めましょう。

 

【PROFILE】

おぎわらひろこ

家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数

 

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