日本は現在、世界第2位の長寿国だという。厚生労働省が7月下旬に公表した’16年の日本人の平均寿命は、女性が87.14歳、男性は80.98歳と、過去最高となった。医療技術が進歩しているいっぽう、米を主食に、魚や大豆製品を食べるという和食が健康に貢献しているともいわれている。
しかし、もちろん日本人全員が長寿というわけでもなく、地域差も大きい。日本人の死因1位の“がん”も、かなりの地域差がある。がんの死亡率・罹患率には食生活が与える影響が大きいと話すのは、医学博士で白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二先生だ。
「’15年度の厚生労働省の調査によれば、47都道府県で死亡率が最も高いのが青森県、そして最も低いのは長野県でした。この2つの県の差は、がん死亡率の差によるものだと思われます」(白澤さん)
たとえば肺がん死亡率は青森県が4位に対し、長野県は47位、胃がん死亡率は青森県1位に対し、長野県は43位という結果だった。
「現在では、がん治療の地域差はほとんどないため、発症率が高いほど死亡率も高い傾向にあります。がん発症の要因は、食生活、運動、ストレスの3つです。特に、その地域の特有の食生活によって野菜や塩分、脂肪などの摂取量の差が生じてきます。がんができるメカニズムは複雑なので、因果関係を特定することはできませんが、そういった要素が長年のうちに積み重なって、青森県と長野県のように大きな差になるのでしょう」(白澤さん)
青森県はがん死亡率以外にも、糖尿病死亡率や脳梗塞死亡率も高い“短命県”だ。’15年・女性「死亡率ランキング」(都道府県別年齢調整死亡率〔人口10万人〕の推移〔全死因〕厚生労働省調べ)を見てみると、上位10県のなかに、1位の青森県を筆頭に、福島県(2位)、岩手県(6位)、秋田県(7位)、北海道(8位)と、北海道・東北地方から5つが含まれていた。
各都道府県の生活習慣などの県民性に詳しい、ナンバーワン戦略研究所代表の矢野新一さんは、次のように語る。
「東北地方は塩分を多く使った“漬け物文化圏”です。特に青森といえば“朝ラーメン”という習慣もありますが、インスタントラーメンの消費量は全国1位、またテレビの視聴時間が1位という統計もあります。食後に15分ぐらいのウオーキングをすれば血糖値の上昇を抑えることができるといわれていますが、外出するよりテレビを見てしまうのでしょうか」(矢野さん)
死亡率を押し上げる要因として“喫煙率”も見逃せない。喫煙率が1位の北海道は、肺がん死亡率1位でもある。
「たばこの煙に含まれている化学物質は4000種類以上で、このうち約60種類が発がん物質か発がん促進物質です。また私は日照時間にも注目しています。紫外線はビタミンDの生成に関わっており、骨の健康を保つだけでなく、大腸がんや乳がんを予防するという研究報告もあります。日照時間の短さと、死亡率の高さは、少なからず関係しているように思います」(白澤さん)