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「骨粗しょう症とは骨密度が70%を下回った状態のことで『骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気』として広く知られています。ところが、病気が進行して背中や腰を骨折すると、約40%の人が5年以内に亡くなるという事実は、意外と知られていません。実は骨粗しょう症は、死にもつながる深刻な病気なのです」

 

そう話すのは、骨粗しょう症から更年期障害まで、女性医療全般を専門とする太田博明先生。骨粗しょう症は女性がなりやすい病気の一つで、患者は閉経後の女性が多いという。

 

「骨は皮膚と同じように新陳代謝を繰り返し、約5カ月で新しい骨に生まれ変わります。そして、約5年たつと全身の骨が入れ替わるのです。しかし女性の場合、閉経によって女性ホルモンのバランスが崩れると骨の新陳代謝のリズムが狂い始め、これが骨粗しょう症の引き金となります」(太田先生・以下同)

 

実際に骨粗しょう症と診断されるのは、骨密度の検査で数値が70%を下回った場合だが、これといった自覚症状があるわけではない。そのため、骨折を機に検査を受け、そこで初めて発覚するケースが多い。

 

「やっかいなのは、骨折をしても気づかない人がいることです。60代の患者さんで目立つのは、背中や腰の骨折ですが、この部位は痛みを感じにくく、違和感があっても整骨院や鍼灸院などで済ませてしまう人が多いんです」

 

背骨は、椎骨という小さな骨が積み重なって首から腰までをつないでいる。骨粗しょう症になると、その椎骨の内部(椎体)がスカスカになり、自重に耐え切れず圧迫骨折してしまうというのだ。

 

「椎骨は時間をかけてつぶれていくのでほとんど痛みを感じず、およそ3分の2の人は骨折したことに気づきません。そのまま放置していると2カ所目、3カ所目と骨折の連鎖(ドミノ骨折)が続き、背中がどんどん丸くなっていきます。最近身長が2センチ以上低くなったという人の半数は、椎骨の骨折をしている可能性があります」

 

椎骨の圧迫骨折を起こした場合、5年後の生存率は約60%。実はこの数字は、大腸がんや乳がん、子宮がんの5年生存率よりも低い。症状が進んで、足の付け根を骨折した場合は約50%とさらに下回る。

 

「骨折により背中が丸くなると内臓が圧迫されて、さまざまな内臓疾患の引き金となります。足の付け根を骨折すれば、寝たきりの介護生活の始まりです。骨粗しょう症の人が骨折してしまうと、完治するまでに長い時間がかかります。その間に体力だけでなく精神的な活力も衰え、最後には命まで落とす人が出てくるのです」

 

こうした生存率の数字を見ると、がんより怖い病気ともいえる骨粗しょう症だが、生活習慣を変えれば予防はできる。

 

「加齢による骨密度の低下は避けられませんが、80歳になっても背筋を伸ばして自分の足で元気に歩いている人もいます。骨粗しょう症は、食事や運動など、その人の生活次第で予防できる、生活習慣病なのです」

 

「女性自身」2020年4月21日号 掲載

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