ハンバーグ、餃子……動物性タンパク質が豊富なひき肉を使った料理が健康の秘訣(写真:takeuchi masato/PIXTA) 画像を見る

「元気で長生きするためには、食事がもっとも大事な要因です。国民の消費生活の実態がわかる家計調査には、健康寿命を伸ばすヒントが隠されています」

 

そう語るのは、日本介護予防・健康づくり学会理事長で筑波大学名誉教授の田中喜代次先生。

 

健康的に生活できる期間を示す「健康寿命」。2022年時点の最新の推計結果によると、都道府県別でもっとも長かったのは静岡県の女性(以下「女性」は省略)。しかも平均寿命から健康寿命を引いた「日常生活に制限がある期間の平均」でも「10.31歳」ともっとも短く、静岡県には元気で過ごしている高齢者女性が多いことが明らかになった。

そこで総務省が2月7日に発表した2024年の「家計調査」(二人以上世帯)を調べてみると――。

 

都道府県庁所在地と政令指定都市のなかで、静岡市は昨年1年間で、外食や冷凍食品を除く「ハンバーグ」の1世帯あたりの支出額が3千10円で全国1位に。2位には浜松市(2千689円)が入り、静岡県勢が上位を独占。

 

「県民のソウルフードとして親しまれている静岡にしかないハンバーグチェーン店も人気。外食や冷凍食品を含めると週に1回はハンバーグを食べているかもしれません」(静岡県在住の主婦A子さん)。

 

「太平洋に面し、温暖な気候の静岡県は長寿県として知られていますが、ハンバーグに加え、餃子の購入額で浜松市が日本一になったことから、ひき肉を使った料理にも長寿のヒントがあると推察できます。ひき肉は食が細ったり歯が悪かったりして肉が食べられない高齢者でも、動物性タンパク質を効果的に取ることができます。動物性タンパク質をしっかり取ることで、低栄養による免疫力の低下から風邪をこじらせて、肺炎で亡くなるケースを防ぎます。また血管を強くし、筋肉の衰えを予防する動物性タンパク質をしっかり取れば、寝たきりや熱中症死の予防にもなります」(田中先生、以下同)

 

静岡で晩年を過ごした徳川家康は“健康オタク”として知られ、肉を食べる習慣がなかった戦国時代に誰よりも肉を食べ、平均寿命が50歳ともいわれる時代に75歳まで長生きした。そんな家康公の教えを静岡県民は守っているのだろう。

 

「ひき肉だけではなく、静岡では『まぐろ』の支出額が全国平均の2.5倍、『しらす干し』『干しあじ』は2倍と多いことから、魚由来の動物性タンパク質を取っていることがわかります。また『家計調査3年(2022~2024年)平均』では、植物性タンパク質が多い『豆腐』の支出額で静岡市が全国3位に。静岡県民は長寿のカギを握る動物性・植物性のタンパク質をバランスよく取り入れていることがうかがえます」

 

さらに静岡市の支出額で日本一となった「緑茶」は、がん細胞の増殖を抑制する働きがある茶カテキン、血管の健康を保つカフェインなどを含有。国立がん研究センターの研究では、1日5杯以上緑茶を飲む女性は、1杯未満の人と比べて、胃がんのリスクが3割減、脳梗塞のリスクも2割程度減ることが示されている。

 

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