「50歳をすぎると、化粧の悩みが一気に増えていきます」
そう語るのは、日本化粧品検定協会の代表理事・小西さやかさんだ。
「50代になると、皮脂の量が40代に比べて5分の1に減少します。潤いをキープする力が弱まり、肌が乾燥しやすくなってしまう。また、肌の黄ぐすみや、筋力の衰えによる瞼のたるみも出てきます」(小西さん)
さらに、50代向けコスメのプロデュースもする美容家の鈴木絢子さんはこう続ける。
「ターンオーバーが遅れることで角質がはがれにくくなり厚みが増すため、化粧品が浸透しづらくなってしまいます。頬が脂肪の重みで落ちてきて、ほうれい線が深くなってしまう。ファンデーションをつけて笑うと、そのままほうれい線の形が残ってしまうという人も。またルージュを塗っても、なかなか唇の縦じわを隠せなくなってしまいます」(鈴木さん)
年を重ねると、若かったときに使っていた化粧品ではいろいろ不都合が出てくるのだ。
「そんな悩みを受けて、今オーバー50向けの化粧品が増えています。CMには小泉今日子さん(52)、真矢ミキさん(54)、沢口靖子さん(52)をはじめ、若々しく美しい新50代女性が多く起用されています」(鈴木さん)
さらに、資生堂の50代向け化粧品「プリオール」は“大人の七難”として「凸凹、影、色、乾く、下がる、見えにくい、おっくう」を挙げている。
「『おっくう』というのはこれまでにない悩み。まさに時短時代を反映しています。それを受けて、オールインワンタイプのようなラクできる化粧品が増えました」(小西さん)
そして、小西さんはこう続ける。
「『サザエさん』の母、磯野フネさんの設定は50代なんだそうです。それが日本女性の昔のイメージだったんですね。以前は50代に入るとお化粧をやめてしまう人がいましたが、今は50代以降も女であることを楽しむ時代になりました。家事に仕事と多忙を極めていても、お化粧して、女性として美しくありたい。そんな声の高まりが、オーバー50向けの化粧品が増えている理由です」
以前は、高齢向けの化粧品というと、紫色のアイシャドーやドーランのようなファンデーションなど“過剰”なものが多かった。今は、技術の進歩もあって、ナチュラルメークでも、十分にしみやしわを目立たせなくできる化粧品が登場してきた。
「これまでは50代以降の化粧品というと、選択肢は限られていましたが、今は種類も増えて好きな商品を選べます。若い人向けにはない悩みも解消できて、おっくう、時短でも美しくなれる。いい時代になりました」(鈴木さん)