「とうもろこしはリノール酸(多価不飽和脂肪酸)やオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)などの不飽和脂肪酸を多く含みます。不飽和脂肪酸のなかでもリノール酸は必須脂肪酸といわれ、体内では合成できない重要な栄養素なんです」
こう語るのは、免疫疾患予防、老化予防など食品の機能性についての研究を行っている今井伸二郎教授。夏野菜の代表の1つ、とうもろこし。元気いっぱいの黄色の実には活性酸素を撃退するなどの、魔法の成分が詰まっているという。そのひとつ、リノール酸は生活習慣病の予防に役立つそう。
「リノール酸は悪玉コレステロールを下げる効果があり、高血圧や動脈硬化の予防、改善効果が期待できます。そして強力な抗酸化作用を持つビタミンEが豊富に含まれているので、活性酸素を撃退し、体内から老化抑制の働きをしてくれるんです。また、ビタミンEには血行をよくする働きもあります。リノール酸、ビタミンEがともに多く含まれているとうもろこしは、健康の面からも美容の面からも、抗老効果の高い食品なのです」(今井先生)
さらに、黄色、赤色などの色素であり、抗酸化作用の高い成分、カロテノイドも多い。
「カロテノイドの仲間で、みかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチンには強力な抗がん作用があるという報告があります。これが、野菜ではとうもろこしに多く含まれているのです」(今井先生)
同じくカロテノイドの一種、ルテインもたくさん含む。
「ルテインは目の老化を防ぎ、視力低下を抑える働きがあります。ほうれん草ほどではありませんが、とうもろこしも多いほうですね」
また、糖質をエネルギーに変える“補酵素”の働きをするビタミンB1も豊富に含んでいるので、夏バテ予防にもぴったりなのだ。
ところで、とうもろこしを食べた翌日、便のなかに黄色い粒がそのまま出てきたことはないだろうか。これってもしかして、栄養がそのまま出ちゃってる!?
「とうもろこしの粒の表皮は消化酵素の作用しないセルロースの膜で覆われています。このせいで、とうもろこしは消化されにくい種子として有名なんです。便に種子が交ざっている場合は未消化で、原因は咀嚼不足。でも、きちんとかみさえすればセルロースはすぐに破れて、中身を消化することができます」(今井先生)
とうもろこしは、特に意識してよくかんで食べ“つぶつぶうんこ”を防ぐべし!いっぽうで、セルロースは水に溶けない不溶性の食物繊維なので、腸内環境を健全に整える作用がある。つまり、便秘予防や改善に役立つので、大腸がん予防、さらにはダイエット効果も期待できる。
夏は冷房のせいで体が冷え、汗もよくかくので、血液の循環が悪くなりがち。
「カリウムが多く含まれていることも、とうもろこしの特徴です。カリウムはナトリウム(塩分)を排出する働きがあるので、高血圧予防、利尿効果があり、むくみ対策にもなります」(今井先生)
意外なことにカリウムがもっとも多いのは子実ではなくて“ひげ”。管理栄養士の関口絢子さんが活用法を教えてくれた。
「ひげにはカリウムや骨粗しょう症を予防するビタミンKが豊富なので、捨てるなんてもったいない!効果的に摂取するには料理に使うといいですね。かんたんなのは素揚げ。泥がついている部分をよく洗い、キッチンペーパーで水分を取ったら、素揚げするだけです。そのまま食べたり、トッピングに使ったり、あえ物やサラダに加えてもおいしいですよ。生のままスープやみそ汁に入れたり、刻んで薬味に使ったり、スムージーに加えるのもおススメです」(関口さん)
さらに簡単に栄養を摂取したいなら、コーン茶もいい。
「コーン茶にはカリウムのほか、造血作用や貧血予防の鉄分、ビタミンA、E、B1といった美肌効果や疲労回復に役立つビタミンが含まれています。ダイエット中の方にもおススメですよ」(関口さん)
この夏はひげごと食べて、心も体もぴちぴちになろう。