「人間関係に相性があるように、食材同士にもまた“合う、合わない”があります。食材の栄養価値を高める組み合わせもあれば、反対に相殺してしまうケースもあるのです」
こう話すのは、食材の相性について長年研究をしている栄養学博士の白鳥早奈英さんだ。
健康のためにと栄養価の高い食材を意識的に取っていても、一緒に食べる食材によってはその効果が打ち消されてしまったり、さらには不調を招く原因となってしまうこともある。
寒さが本格的になる時季を前に、栄養素をムダにしないためのポイントを押さえておきたいところだ。ここでは、これからの季節、食卓に登場する機会の多い食材について、注意すべき組み合わせを白鳥さんに教えてもらった。
冬に旬を迎えるホタテやカニなどの魚介類を例に見てみよう。
「イワシやサバ、サンマなどの青魚はDHAやEPAを多く含んでおり、脳の若さを保つためにも積極的に取りたい食材ですが、エビと組み合わせると栄養の吸収効率が落ちてしまいます。生ホタテとイクラの組み合わせも、大切なビタミンB₁を破壊してしまうというもったいない組み合わせです。また、柿+カニの組み合わせは体を冷やすことにつながるため、これからの季節は特に注意したいところです」(白鳥さん・以下同)
やはり旬を迎えているさつまいもは、意外にも大豆との相性がよくないという。食物繊維、タンパク質を摂取できて一見よさそうなものだが…。
「さつまいもと大豆は同時に食べすぎると食物繊維の取りすぎになってしまいます。すると、必要な栄養素まで体外に排出されて、栄養不足につながることも。大豆とヒジキのように、腹痛を起こす場合もあります。少量であれば問題ありませんが、食べすぎにはくれぐれも注意が必要です」
鉄分を取るためにと食べる人も多いヒジキだが、れんこんと組み合わせると栄養が十分に吸収できないことに。
NGの組み合わせであっても、回避策がある場合も。
「たとえば、生ホタテとイクラの場合、ホタテを加熱すれば、ビタミンB₁をしっかりと吸収できます。にんじんと大根の組み合わせでは、にんじんに含まれる酵素が大根のビタミンCを壊してしまう組み合わせなのですが、酢を加えれば、ビタミンCを取りこぼさずにすみます」
おせち料理にも登場するなますは、まさにこの組み合わせ。酢で締めることにより、栄養が取れるようになっているわけだ。
秋から冬にかけての主な食材を見てきただけでもこれだけの数がある。日ごろの食事ではどこから気をつけるべきなのだろうか。そのポイントとして、まずは自分のよく食べるもの、好きなものがリストに入っていないかどうかを確認することが大切だと白鳥さんは話す。
「よくない組み合わせをすべて避けるというのは残念ながら現実的ではありません。まずは自分の食習慣と関係の深いものから気をつけるようにしていくことが大切です」
旬を迎える食材や、時節の料理も増えてくるこれからの季節。食べ合わせのルールにも注意しながら、秋冬の味覚を楽しもう。