【事例3:腰椎・仙椎を骨折】
1回1時間で週2〜3回のトレーニングを始めた30代女性。初期の段階で、しゃがんだ姿勢からバーベルを持ち上げる「デッドリフト」を指示され、2カ月後には30〜45kgと急激に負荷を上げられた。だが、ある日急に軽い重量も上げられなくなってしまった。
整形外科を受診すると「腰椎・仙椎の骨折」が発覚。医師によれば「過負荷(重すぎる)と考えられるバーベルを、前屈位の状態でのデッドリフトにより持ち上げるのは大変危険な行為」で、やり続けたことで「疲労骨折」した可能性もあるという。事故から約2カ月後に別の整形外科を受診した際、「あと1カ月の治療期間が必要」と言われている。
【事例4:腿上げで肋骨骨折】
下半身のトレーニングをしていた30代女性。トレーナーが足首をつかんで負荷をかけた状態で腿上げをして、足を胸まで強く引き上げる動作を繰り返した。
胸に強い痛みを感じ、その後も痛みが治まらず、後日、整形外科を受診。「トレーニングが原因で肋骨が折れている」と診断された。
【事例5:極端な食事制限で湿疹】
20代女性はネットで見つけたジムと契約。トレーナーの指示で、食事は完全に糖質をカットした。
開始から3週間ほどで上半身に湿疹が出始めた。糖質を加えた食事内容に変えたが湿疹は悪化。医師の検査の結果、「糖質制限による色素性痒疹だろう」と診断された。約1カ月後には赤みやかゆみはなくなったが、茶色いアザのような痕が全体に残ってしまった。
なぜ、このようなトラブルが起きてしまうのだろうか。
「テレビやネットでは『パーソナルトレーニングなら確実に結果が出て、理想の体を手に入れられる』などと宣伝されています。その結果、利用者は即効性を求め、トレーナーの言うことをなんでもうのみにしてしまいがちです。いっぽう、トレーナーは短期間で成果が出れば口コミで評判が広がるので、『限界を超えろ』という昭和の体育会系のような指導もなかにはある。特に個室では密室状態で、歯止めがきかなくなります」(前出・フィットネス関係者)
そもそも私たちにとって「いいパーソナルトレーナー」とはどんな人なのだろう。
「まず、1回目できちんと体力測定をし、健康状態のヒアリングに時間をかけるトレーナーです。それから、『すぐに成果が出ますよ』などと言わず、『できるペースで継続しましょう』と、現実的な目線を忘れない人。『調子がよくないときは、休んでくださいね。回復したらフルで頑張れますから』と長期的な視点でじっくりと指導をしてくれる人も安心できます」(前出・フィットネス関係者)
最後に、パーソナルトレーナーと契約するときの注意点について、前出の国民生活センターの担当者がアドバイスをくれた。
「’22年に実施した『消費者へのアンケート調査』では、ケガや体調不良が起きたとき、『ジムやトレーナーが加入していた、または入会時に勧められたオプション加入による保険等で治療費等、十分な補償があった』と回答した人は、わずか11.5%でした。まずは入会、契約の際に、事故やケガの起きた際の説明をしっかり聞き、契約書や約款にも、きちんと補償の説明がされているかどうか確かめてください」
特に50代以降は「健康に生きるための体力維持、体力向上」がトレーニングの主目的と意識すべき。無理な負荷や目標でケガや体調不良を起こし、本末転倒になってしまわないよう、着実に継続できることを念頭に鍛えよう!