「人の体では、古い骨が溶かされて削られる『骨吸収』と、新しい骨が作られる『骨形成』が繰り返されていきます。運動不足や女性ホルモンの減少によって、両者のバランスが崩れると、骨吸収が優位になってしまいます。しかし、ひざをたたいて骨への刺激を与え続けることで、そのバランスがよくなって、骨を丈夫にすることができるのです」
効果はそれだけではない。若返りホルモンも分泌されるのだ。
「骨の中にある骨芽細胞は、骨に刺激があると反応して働きがよくなり、若返りホルモンの『オステオカルシン』を分泌します。これは骨ホルモンとも呼ばれていて、血管を通り、全身に運ばれて心臓、肝臓、腎臓、すい臓、腸など多くの臓器の機能を活性化させます。血液の代謝をよくして免疫力を上げ、筋肉量のアップも期待できるのです。さらに、血糖値の上昇を抑えたり、アルツハイマー型認知症を予防したりする効果があるとみられています」
もう一つ「オステオポンチン」という免疫力を高めるホルモンも分泌されるという。
「これまで、この2つの若返りホルモンは、骨が大量に作られないと分泌されないと考えられていたのですが、最新の研究によって、骨に刺激があるだけでも出ることがわかったんです」
踏み台を使った昇降運動で骨を刺激すると、若返りホルモンが分泌することが、最初に確認された。
「ならば、座った状態でひざをたたくことで同様の刺激を与えれば、同じような効果が期待できると考え、実験を行いました。その結果、ひざをたたくだけでも、若返りホルモンが出ることを確認したのです」
中村先生が重視したのは、「かんたんに継続でき、安全な動きであること」。ひざたたきは、まさにその条件にぴったりだ。
「骨を強くするには、継続が何より大事。テレビを見ながら、トイレで、電車でなど、座る機会があれば、積極的にやってください」
10回1セットで、1日合計100回を目指そう。さらに、余裕がある人は、左の「足踏みトントン」もやってほしい。
「人生100年時代。50代なら、まだ40年以上も人生は続きます。ひざをたたいて、体の土台である骨を強くして、いつまでも元気でいてください」
ひざたたきで、100歳まで歩ける体を手に入れよう。