海外では、雷雨の後に雷雨ぜんそくが大発生した事例もあると語る小柳さん。
「オーストラリアで’16年、強い雷雨が発生し、直後からぜんそく発作で治療を受けた人が、なんと1万3千人に達しました。なかには重症者もいて、最終的に9人の死者が出てしまったんです」
このオーストラリアでの雷雨ぜんそくの大発生は、イネ科の植物の花粉がおもな原因とされたのだという。
「普通、花粉の粒子は大きいので、吸い込んでも目や鼻、喉の粘膜に付着するまで(花粉症の発症)でとどまるのがほとんどです。
しかし雷雨や豪雨などで水分を含むと、花粉は膨張して破裂し、粉々になります。その細かくなった粒子を吸い込んで気管支まで入ってしまうことが、雷雨ぜんそくの一因になるのではないかと考えられます」
この、花粉由来による雷雨ぜんそくが、日本で大発生する可能性はどれくらいあるのだろうか。
「日本で春に大流行するのはスギ花粉による花粉症で、成人の3~4割程度の方にスギ花粉症があると考えられます。
イネ科植物の花粉症の患者はスギ花粉症よりも少ないですが、私が診察してきた肌感覚では、スギ花粉症の10分の1ほどの患者数ではないかと推測しています。
その方々を中心に、今後、日本でも雷雨ぜんそくにかかる方が出る可能性は十分あるでしょう」
実際に、台風や豪雨などのあとにぜんそくの症状で小柳さんのクリニックに来院した雷雨ぜんそくが疑われる人のうち「一定数は、以前にぜんそくがなかった方なんです」と小柳さん。
健康な人でもある日突然、雷雨ぜんそくにかかることもあるのだ。
「異常気象によって台風や豪雨、雷雨が増えれば、雷雨ぜんそくのような症状の方が激増してもおかしくない。特にこの秋は注意したほうがいいでしょう」
来院してぜんそくと診断された人には、内服薬や吸入薬などを用いた外来通院治療を開始することが多いという。
では、私たちが雷雨ぜんそくにならないためにできることとはなんだろうか。
「まずは、マスクを着用することです。コロナ対策でポピュラーになったサージカルマスクや、N95マスクなどは、雷雨などによって粉々になった微細な花粉でもある程度ブロックできます。
次に、雷雨の日や、台風通過の翌日は、できるだけ不要な外出を避けることです」
まずは、この2つの予防法から始めて、台風や豪雨だけでなく、雷雨ぜんそくにもきちんと準備をしておこう。