年齢を重ねて健康に過ごすには何に気を付ければいいのか。医師の和田秀樹先生は、こう話す。
「高齢者はやせてはいけません。やせることは、筋力の低下につながり、歩行に影響します。動かなくなると、体が衰え、要介護に進むこともある。それが原因で認知症につながる場合もあるのです。
やせることは、老化を早めること。むしろ危機感を持ったほうがいい。いかに体重を減らさず、『ちょっと太めを維持する』か、それが大事なのです」
こう聞くと驚く人もいるかもしれない。年をとると食べるのが面倒になったり、欠食しがちになる。それが、無意識のダイエットになっているケースがあるのだ。
「栄養をとっていないと体重が減ります。そこでやせたと喜んではいけません。健康にやせたのとは違い、このような状態による体重の減少は、体内の水分減少と筋肉減少ですから、体力が落ちて疲れやすくなり、肌にハリやツヤもなくなってしまいます」(和田先生、以下同)
動くと疲れがち、日常の動作がおっくう、何をするのも面倒……。このような状況になると運動量がさらに減り、外出さえ面倒になる。冒頭にもあるように、気づいたときには歩けない状態になって、将来寝たきりになる日が来る可能性があるのだと先生は指摘する。
高齢になると、食べる量があまり減っていなくても除脂肪体重(体重から脂肪量を引いた重さ)の割合が減少していることがある。除脂肪体重の主要な成分は、骨格筋、結合組織、細胞内液、骨だ。
「除脂肪体重の割合が減少しているということは、つまり、筋肉量が減り、骨がスカスカになり、細胞内液が減って肌が老化するわけです。これに栄養障害や摂食障害、ダイエットなどが加わると、除脂肪体重はさらに大きく減少します。
そして、年をとると食べ物がうまくのみ込めない嚥下障害なども起こります。食べ物を食べる・のみ込むのにも筋力が必要なのです」
なるほど、筋肉量を増やす=筋肉やせにならない、ということがいかに重要か、が理解できる。