■インスリンの分泌力が弱まる50代以降で高血糖のリスクがグンと高まる
そもそも、血糖値とは、血液1dLに溶けているブドウ糖の数値のこと。この濃度が基準値よりも高くなり血液中に余った糖が停滞する状態が「高血糖」だ。
「基準値は、空腹時の血糖値が110mg/dL未満。食後2時間が140mg/dL未満です。これを超える高血糖が続くと、血管がボロボロになり糖尿病や動脈硬化、脳梗塞をはじめ全身に支障をきたす糖尿病合併症も発症します。
原因は、食べすぎや肥満などの生活習慣の乱れだけでなく、加齢もあります。50代以降では、食事の内容や量が、それまでと同じでも、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌力が弱まります。それによって、スムーズに糖が処理できず、高血糖の状態が引き起こされるのです」
さらに、血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」も、動脈硬化の原因になるので、要注意だという。
食後、血糖値が140mg/dLを超える、また、30分で60mg/dL以上の上昇幅があると血糖値スパイクの目安。そこで、左のオートミールを食べたときの血糖値の上昇の変化を表したグラフを見てほしい。食前の105mg/dLから、食後60分で基準値を大きく超える181mg/dLと血糖値が急上昇している。
「食後20分を境に、急激に血糖値が上がり60分後にピークを迎えて下がっていく形が、とがったスパイクのようです。ヘルシーといわれるオートミールですが、糖質量が多く血糖値スパイクが起きていると考えられます」
■ベジファーストよりも効果的な食べる順番
山村医師の実測をもとに、どんな食べ物が血糖値を急上昇させるのかを知っておきたい。
低GI食の代表格であるそばだが、食後50分後には172mg/dLまで血糖値が上昇。また、デトックス効果が期待されるバナナやキウイ入りのスムージーは、161mg/dLまで上昇する。
一方、すしだと177mg/dLまで血糖値が上がるが、刺身だけだと食後もほぼ上がらない。
「注意すべきは炭水化物の糖質量。ご飯、パン、パスタ、うどん、そば、いも、果物、フルーツジュースが血糖値を引き上げます」
次に食べる順番に気をつけよう。
「野菜を先に食べるベジファーストよりも、炭水化物の主食を最後に食べる『カーボラスト』が血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。前菜などから食事を始めて、最低10~15分たってから炭水化物を取るようにしましょう。また、かみ応えのあるナッツを食前に食べる『ナッツファースト』や、タンパク質(プロテイン)を先に取る『プロテインファースト』も満腹中枢を満たしてくれるので食べすぎを防ぎます。さらに、乳脂肪は糖質の消化と吸収を遅らせる働きがあるので、糖質の多い食品は牛乳を飲みながら食べると急な血糖値の上昇を防ぐことができます」
■食後に眠くなったら、高血糖のサインかも!!
測定器がない私たちにもわかる血糖値スパイクのサインがある。
「食後に眠気を感じるのは、急上昇した血糖値を下げようと体内でインスリンが大量に分泌されていることが原因。食後2時間ほどで『おなかがすく』のも血糖値の急降下が起きています。そのような場合はご飯など炭水化物の量を減らしましょう」
更年期を迎え、基礎代謝も落ちる50代は、食の見直しタイミング。よかれと思った食材がアダとなることのないよう注意したい。
