■夫の死後、基礎年金はひとり分に
夫が現役時代に会社員や公務員だった場合、夫の死亡後に妻は遺族厚生年金を受給できる。だが、7年前に夫と死別した都内在住の阿久津恭子さん(79歳・仮名)はこう語る。
「夫が生きていたときは月20万円ほどの年金収入があり、国内旅行に行ったり、孫と外食したりと慎ましくも楽しく暮らしていました。いざというときも、遺族年金があるから大丈夫だと思っていましたが、いざ、夫が亡くなって“こんなに年金が少なくなってしまうの”と絶望しました」
生活設計塾クルー取締役でファイナンシャルプランナーの深田晶恵さんが語る。
「遺族年金は、会社員・公務員だった夫の『老齢厚生年金』(報酬比例部分)の4分の3にあたる額。老齢基礎年金は“1人1つ”が原則なので、遺族年金の対象外です。残された妻は、遺族厚生年金と自分の基礎年金で生活することになります。
厚生労働省がモデルとする比較的恵まれた世帯で試算しても、夫が亡くなれば年間100万円も収入がダウンします。まずは、この現実を認識することが重要です」
働いて“自分の年金”を増やし、貯蓄することが賢明な対策のひとつだと深田さんはこう語る。
「時給で働くパートには社会保障の壁として『106万円の壁』と対象範囲が広い『130万円の壁』があり、その壁を越えると夫の扶養から外れて自分で年金や健康保険の保険料を負担することになります。
厚生年金に加入して自分で保険料を払うと、将来の年金額がわずかですが増えます。たとえば年収155万円で20年間働き続けると、将来もらえる年金額は約17万円、1カ月あたり1万4000円増えます。年金生活において1万〜2万円が増えるメリットは大きいのです。
会社員の妻で、パートをしている女性に多いのが“自分の小遣いぐらいは自分で稼ぐ”と稼いだ分を使いきってしまう人。できればパート収入の半分は、自分名義の口座に老後資金として貯めましょう」