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「30~40代の働き盛りは自分が60代、70代になるなど想像しにくく、老後の蓄えは常に後回しに。50代も住宅費に加え子どもの教育費がのしかかり、貯蓄まで手が回らないのが実情。60歳にさしかかり貯金がゼロという現実に、これから先の人生をどうしようと、はたと気づく人も少なくありません。

 

しかし行動変容することで“60歳、貯蓄ゼロ”からでも老後の資産作りは十分に可能です」

 

と語るのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さん。

 

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(令和5年)によると、60歳代(二人世帯以上)の平均貯蓄額は2,026万円。

 

貯蓄額ごとの世帯割合を見ると「3,000万円以上」という世帯が20.5%いる一方で、「金融資産非保有」、いわゆる貯蓄ゼロの世帯も21%いる。

 

■老後資金を作るには「人生100年」を見据えて

 

60歳、貯蓄ゼロから老後資金を貯めるには、どうすればいいのか? 山中さんに教えてもらった。

 

「そもそも60歳で貯金がないから大変だと思っている方は、長生きするかもしれないから不安が生じているはず。つまり、少なくとも健康であるからこそ、心もとないと思っているわけです。

 

ここで“どうせ私は長生きしないから”と思ってもなにも解決しません。“長生きリスク”ではなく、“長生きするチャンス”を得られたと考えることが第一歩です」

 

厚生労働省が発表した「簡易生命表」(令和5年)によると、60歳まで生きた場合の平均余命は、女性で28.91歳(男性で23.68歳)。

 

また、90歳を迎える女性の割合は50.1%(男性は26%)にもなる。

 

老後資金を作るには“人生100年時代”を見据えてプランを練っていくことがポイント。さらに時代も追い風となっている。

 

「たとえば60歳を過ぎても働ける環境が整いつつあります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(令和5年)によると、60?64歳の平均賃金は正社員で月349,300円です。

 

国も、企業に70歳までの就業機会の確保を努力義務として課していることを考えると、今後、シニアになっても勤労収入を得られる環境は整備されていくことでしょう。

 

また昨今は、お金を眠らせておくと価値が目減りするインフレ時代。今後も続くインフレから生活を守るためには投資で増やしていくことが重要。そこに2024年に登場した新NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などによる投資が効果的にサポートします」(山中さん、以下同)

 

株式や投資信託などの運用で生まれた利益が非課税になるNISAとiDeCoは資産形成の強い味方。

 

しかし投資にはリスクがつきものだ。安定運用には「長期・積立・分散」という三原則がある。なかでも「長期」は、60歳からでは遅すぎるのでは……。

 

「たしかに、とくにNISAは長期にコツコツ運用することが大切。そのため30代、40代の利用者がもっとも多いのです。

 

しかし2024年1月からは、投資方法が『積立』だけでなく『一括』と併用できることに。

 

退職金を長期運用する人が増え、60代以降の利用者も急増しています」

 

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