介護費用の自己負担を減らす「介護保険負担限度額認定制度」と「世帯分離」とは?専門家が解説
画像を見る 食材費、人件費の高騰で介護施設の食事にも影響が(写真:buritora/PIXTA)

 

■物価高が続くなか介護保険負担限度認定証制度の申請を考えよう

 

そもそも介護保険負担限度額認定制度とは、どのような制度なのだろうか?

 

「原則、住民税非課税の人が対象です。たとえば単身で年金などによる年収が80万~120万円、預貯金が550万円以下だと、食費は1日650円、ユニット型の個室の居住費は1日1,370円が負担額の上限に。

 

厚生労働省が示す基準自己負担額(第4段階)である、食費1日1,445円、居住費1日2,066円(ユニット型個室)と比べても割安になります」(結城先生)

 

この介護保険負担限度額認定制度を利用するためには、自治体の介護保険担当窓口に申請書や預貯金通帳の写しなどを提出。

 

収入状況や預貯金額によって認定証が交付される。5段階に分けられるそれぞれの条件は表を確認してみて。

 

結城先生がこう続ける。

 

「この物価高で介護保険施設は危機的な状況が続いています。

 

というのも、ほとんどの施設は給食を委託しており、食材費や人件費が値上がりするなか委託料も高騰しているからです。

 

低所得者の食費の負担限度額を上げるわけにはいかず、一定の所得や資産がある第4段階の人の食費を値上げせざるをえないのです。

 

この物価高が続くなか、まだ認定証の手続きをしていない人は、申請を考えてみたらどうでしょう」

 

物価の高騰とともに膨れあがる介護費用。

 

そこで自己防衛術として注目されているのが世帯分離だ。

 

お金と福祉の勉強会」代表の太田哲二さんが語る。

 

「世帯分離は、住民票に登録されている一つの世帯を2つに分けること。

 

ひとつの屋根の下に住んでいてもできます。

 

とくに低所得の親が、ある程度年収がある子の扶養に入って、一つの世帯になっている場合には、世帯分離が大きな威力を発揮します」

 

たとえば、父親が亡くなり、母親と子夫婦が一緒に住んでいるケースで世帯分離の仕組みを見てみよう。

 

母親の収入が年金だけで80万円未満の場合、世帯分離をして、母親一人世帯にするだけで、母親は住民税非課税世帯に。

 

介護保険料の支払い額が年65,280円から、年21,960円と大きく減る。

 

太田さんがこう続ける。

 

「さらには高額介護サービス費の上限額は、所得に応じて分かれていますが、利用者本人だけでなく同居の家族の収入も含めた世帯全体の所得。

 

世帯を分けることで、親の収入は年金だけなので、上限は44,400円から15,000円に抑えられます。

 

かりに月35万円分の介護サービスを受けたら、自己負担額は35,000円から15,000円に下がるのです。

 

また介護保険負担限度額認定制度においても、世帯分離を行うことで、母親は第4段階から第2段階になります。

 

介護保険施設での食費の負担限度額が1日1,445円から390円、居住費が2,066円から880円になり、月約7万円も自己負担額が軽くなるのです」

 

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