今年4月、内閣府は《自宅で誰にも看取られずに亡くなり、死後8日以上経過して発見され、生前、社会的に孤立していたとみられる》人を「孤立死(孤独死)」と位置づけてその件数を推計。2024年は2万1千856人だったと初めて発表した。
全国の警察が取り扱った自宅で死亡した一人暮らしの人は昨年1年間で7万6千20人にのぼり、そのうち65歳以上の高齢者が5万8千44人と8割近くを占めていることもあきらかになった。
『孤独死のリアル』(講談社現代新書)の著書がある淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授が語る。
「内閣府が初めて全国の孤独死の実態を発表したのは『孤独・孤立対策推進法』が昨年施行され、孤独死防止が急がれるからです。
また死後1週間以内に見つかった人は7割以上にのぼっており、内閣府が位置づけた孤独死より“実質上の孤独死”はさらに増える可能性も。孤立しがちな独居高齢者の割合は今後も上昇していくなか、有効な孤独死対策が求められています」
不自然死の死因を明らかにする「監察医務院制度」が定着している東京23区内のデータによると、一人暮らしの高齢者の孤独死は、2003年には1千441人だったが、2021年には3千963人と約2.7倍に増加している。
増加する孤独死について結城先生がこう解説する。
「孤独死について『寂しい』『切ない』など個人の問題として捉えると本質が理解しにくくなります。孤独死は、故人の尊厳にとどまらず、遺体の処理や清掃、住宅の資産価値の低下、さらには財産の整理など社会的コストも伴います。地域社会とのつながりの希薄化が引き金になることも多く、社会の問題として捉えることが重要です」(結城先生、以下同)
そこで本誌では、都道府県別の「自宅において死亡した一人暮らしの者(65歳以上)」(警察庁発表2024年)と国勢調査(2020年)65歳以上の単身世帯数から「孤独死する県、しない県」を調査。
その結果「孤独死する県」は愛知県になり、もっとも「孤独死しない県」は大分県に。そこから見えてくることは?
「高齢者の孤独死のなかには、倒れて具合が悪くなっても助けを呼べないまま亡くなっていくケースも。対策には、自治体の見守りサービスなど何かあったときにすぐに助けに来てくれる存在が不可欠。
さらに高齢者が仕事でもボランティアでも外に出て『縁』をつくる仕組みがあるところは孤独死が少ない。
大分県は、高齢者が公民館や集会所に集まり体操や生きがい作りなど交流を楽しむ『通いの場』が盛んで、参加率14%(2023年)で、10年連続で全国1位。地域とのつながりが密接になり、なにかあったときに周囲が気にかけていることが孤独死対策になっている可能性があります」
「通いの場」は介護予防の一環として厚生労働省が提唱する、住民主体の健康活動の場で、社会とつながることも目的のひとつ。
ちなみに愛知県の「通いの場」参加率は、4.4%(2022年、以下同)と全国平均(6.2%)より低い。また2位の香川県(4.0%)、3位の千葉県(3.5%)、埼玉県(3.8%)、東京都(5.2%)と「孤独死する県」にランクインした都県では「通いの場」の参加率が全国平均を下回っているのだ。
一方、熊本県(7.6%)、鹿児島県(9.1%)、島根県(12.3%)と通いの場への参加率が高い県が「孤独死しない県」に名を連ねている。
