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「団塊の世代すべてが75歳以上になる2025年ごろは、医療機関や介護施設で大きな混乱が予想されます。しかし、それは日本の社会保障制度が崩壊する序章でしかないのです」

 

そう語るのは、ベストセラー『未来の年表』(講談社現代新書)の著者で人口減少対策総合研究所理事長の河合雅司さんだ。人口減少社会で、日本の社会保障サービスの根幹をなす医療はどうなるのだろうか。

 

《’25年12月。人口8万人の△×市にある実家に帰省していたA子さん(50)は、78歳になる母親が腹部の激痛を訴え、救急車を呼んだ。ところが、救急車の到着は「119番」から30分後。しかも、運び込まれたのは隣の市にある総合病院で、救急車で50分近く走ることに。母親は治療を受けて入院。そこで、トイレ介助を頼もうと、A子さんはナースコールを押した。しかし、すぐに看護師からの返事はなく、やってきたのは30分もたってからだった……》

 

満足な医療サービスを受けられないA子さんの母親。しかし、このシミュレーションは5年後、現実に起こりうるかもしれない。

 

厚生労働省は、’25年には内科医が1万4,000人、看護師をはじめとする看護職員が最大27万3,000人、不足すると試算しているのだ。

 

河合さんが解説する。

 

「都市部ではベッド不足が深刻化する一方で、地方では人口減少により、医師や看護師だけでなく、患者数も不足し、病院が経営難に陥ることも想定されます。閉院する民間病院も出てくることでしょう。結果として地方でもベッド不足が広がります。また、’24年に、日本は全国民の3人に1人が65歳以上、6人に1人が75歳以上という超高齢者社会に。75歳以上になると大病を患う人は増え、1人あたりの医療費が74歳以下の5倍近くかかるというデータもあります。高齢者の増加で救急搬送が増えると、救急隊員の不足で、救急車がすぐに来ないという事態も起こりかねません」

 

’16年は通報から病院に搬送されるまでの平均時間は39分。これが1時間を超えることも覚悟しなければならなくなるようだ。

 

シミュレーションは終わらない。

 

《’27年5月。A子さんはステージ3の肺がんと診断され、すぐに開胸手術の必要があると言われた。しかし、執刀医が不足しているうえ、A子さんの前にも手術待ちの患者が大勢控え、輸血用の血液の確保にも時間がかかるため、手術は2カ月後になるという……》

 

河合さんが語る。

 

「高齢者が増えることで、手術やがん治療などに使用される輸血用血液の需要も高まります。一方、献血者は年々減少。’27年には約86万人分の輸血用血液が不足するという試算もあります」

 

また、厚生労働省によると、’25年は手術患者数が1.3倍に増えるという。

 

「手術室が2〜3室ほどしかない地方の病院では、絶えず手術室が埋まっている状況も考えられます」

 

現状でも数週間かかる手術の待期期間が、数か月待ちになってもおかしくない。

 

なすすべはないのだろうか?

 

「たとえ出生数が増えても、その子どもたちが働くまでに約20年はかかり、問題は解決しません。しかも、’25年ごろに団塊の世代が一斉に大病となるわけではありません。状況は年々、悪化します」

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