「これまで“腸活”に励んできた方は、『善玉菌を増やす』ことを第一に考えていたと思います。ですが、その考えはもう古い! これからは『酵素』に注目です」
そう語るのは国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所でセンター長を務める國澤純先生。先生によれば、腸内環境の研究から導き出した“新しい腸活”があるというのだ。
私たちがふつう考える腸活といえば、納豆やヨーグルト、食物繊維などを食べることだが……。
「それは間違いではありませんが、食べることは健康の入口にすぎません。健康のために本当に重要なのは善玉菌そのものではなく、善玉菌が作り出す“健康にいい物質”で、それを生み出すためには、酵素の働きが不可欠なのです。新しい腸活は、食べることから一歩進んで、健康にいい物質を生み出す『善玉酵素』に注目し、それらが最大限働ける腸内環境を作ることに意識を向けるものです。そして、そのカギを握るのは、食材や栄養素の“食べ合わせ”なのです」(國澤先生・以下同)
善玉菌より重要な善玉酵素とは? どう取り入れればいいの? 酵素の働きや健康効果を最大化するための食べ合わせについて教えてもらおう。
「健康にいい納豆やヨーグルトなどをいくら食べても、善玉酵素がなければ、期待するような健康効果は得られません」
それほど重要な酵素とは、いったいどんなものなのだろう。
「たとえば肉を食べたとき、胃や腸の中でその肉に含まれるタンパク質を分解するために、たくさんの酵素が分業体制で働きます。その結果、タンパク質はアミノ酸になり吸収されます。その後、アミノ酸は別の多くの酵素の働きで別のタンパク質へと変化し、体の一部として働きます。このように酵素には、食べたものを分解する『消化酵素』と、分解されたものを使って体に必要なものに組み立て直す『代謝酵素』の2種類があります」
分業体制とは、酵素には細かい役割分担があるということ?
「はい。酵素はそれぞれ、1つの働きだけを担当します。ある特定のタンパク質がまず酵素Aで分解されて形を変え、それを分解する酵素B、さらに酵素Cと引き継ぎながら、分解を進めます。それぞれの酵素が分解する標的は決まっていて、それ以外にはいっさい作用しません。これは代謝酵素も同じ。このように多種多様な仕事を1つずつ担うために、酵素には膨大な種類があるのです」
私たちの体内では、じつに膨大な種類の酵素が作られているそうだが、持っている酵素は人それぞれ違うこともあるという。
「アレルギー症状の改善効果があるといわれるアマニ油をマウスに与えてみるという実験があるのですが、与える量などは同じでも、アレルギー症状の改善効果に大きな差が出たのです。よく調べると、マウスが持つ酵素に違いがあることがわかりました。これは、改善効果の見られないマウスに酵素がなかったからではなく、もともと持っていた酵素のタイプが違ったからだと考えられます。このマウスは、アレルギーの改善効果があまりない物質を作る酵素を持っていたのでしょう。実は、これと同じことが人でもいえるのです。この種の善玉酵素を持たない人は、アマニ油を取っても、アレルギー改善効果は残念ながらあまり期待できません」