■徘徊による行方不明を防ぐ方法とは?
認知症の人が徘徊で行方不明になってしまう原因に、認知症の中核症状である「記憶障害」と「見当識障害」がある。
認知症の初期の段階では、夕食を食べたことを忘れたり、直近から数日前までの記憶が失われたりという記憶障害が起こる。また、見当識障害は、今の時間や場所がわからなくなるので、外出先でパニックに陥ることがある。
「たとえば、夕方になると自宅にいるのにもかかわらず、昔の記憶がよみがえり、『自宅に帰る』と外に出てしまう。落ち着きをなくして出かけようとする症状のことを『夕暮れ症候群』といい、環境の変化によるストレスが原因で起こるともいわれています。そんなとき、徘徊しないようにドアの鍵を外からかけたり、靴を隠したりして外出できないようにすると、逆効果です。行動のじゃまをする人と思われてしまい、言うことを聞かなくなってしまうこともあるので注意が必要です」(矢野先生・以下同)
徘徊しそうになったときに、矢野先生が家族に勧めている対処法は“寄り添う”ことだという。
「たとえば、お父さんが『会社に行かなければ』と支度をしているとします。叱ったり、止めたりしないで一緒に外に出て、歩きながらほかの話をして気分転換をしてみましょう。会社に行こうとしたことを忘れて、すんなり自宅に戻ったというケースもあります」
そこで問題になるのは、世話をする家族の負担が増えてくること。
毎日寄り添いたいと思っても、介護をする側に負担がかかり、体力的、精神的に限界がきてしまう。 そんなときこそ一人で抱え込まず、ふだんから隣近所の人や民生委員とつながるだけでなく、行政サービスなどの情報を入手しておくともしものときに役立つ。