■「太っている人ほど治りやすい」というデータも
では、どんな人が糖尿病の寛解に至っているのだろうか?
調査によると、年間の、1千人あたりの寛解発生数(寛解した人の数)で、もっとも高い数値を示したのが「1年間の体重の変化」だ。
「体重を1年間で10%落とした人の寛解発生数は、1千人あたり48.2人と非常に高くなっています。これは、たとえば糖尿病で体重80kgだった人が8kg減量することで、年間約4.8%の人が“治っている状態”になるということ。体重減少により寛解が起きやすくなることがわかりました。
ただし、日本人に多い“インスリンが不足する”タイプの糖尿病の場合、高齢の患者さんには痩せている人が多くいます。そのような方が無理して体重を落とすと、筋肉が減少するサルコペニアや要介護になりやすいフレイルの状態になってしまう恐れもあるので、専門医と相談が不可欠です」(曽根教授、以下同)
また、「罹患期間」が短かった人、「ヘモグロビンA1c値」が低かった人、「治療」では薬物治療を受けていなかった人の寛解発生数が高いことも判明した。
「早期に糖尿病と診断され、血糖値の平均値が低いうちに治療を始められれば、寛解しやすくなるということです。ただ糖尿病は自覚症状が少ないので、健康診断を毎年受け、疑いがあれば、すぐに専門医を受診することが大事。
《健康診断を何年も受けていない》《診断を受けたのに治療しない》《治療途中でやめる》などは、寛解しにくくなる原因を作ってしまっているといえます」
一方で肥満度を示す「BMI」は数値が大きかった人、つまり太っている人のほうが寛解に至るケースが多い。
「インスリンは血中の糖分をエネルギー源として取り込みますが、余った糖分は脂肪細胞にため込まれます。BMIが高い人は、インスリンの分泌能力は高くても、効き目が低下していて、糖分の取り込みがうまくいかず、脂肪が蓄積されているといえる。体重を減らせば、インスリンの効き目が回復して、血糖値が低下し、寛解に結びつくと考えられるのです」
“肥満体質だから糖尿病は治らない”と諦めるのは早い。太っている人ほど寛解するチャンスがあるとも考えられるのだ。