「ダメージ受けるのは現役世代」高額療養費制度 自己負担限度額の上限引き上げに識者警鐘
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■高額な抗がん剤を長期間継続して使用する必要も

 

臨床データによると、悪化するまで続くページニオの服用期間は、中央値で約29カ月。つまり、平均すると29カ月間、高額な医療費を払い続けねばならない。

 

「ただし、直近12カ月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降は自己負担限度額が引き下がる“多数回該当”が適用されます。

 

この特例のおかげで長期の治療を継続できている患者も多いのですが、多数回該当の自己負担限度額も現状の4万4,400円から7万6,800円に引き上げられてしまうんです(年収約700万円の場合)」(天野さん)

 

進行性乳がんの患者が29カ月間、ページニオとアリミデックスを併用すると仮定した場合、単純計算(年収約700万円で、上限額3回、4回目以降多数回該当26回の支払いをした場合)でも現在約140万1,000円の自己負担限度額が、約241万3,000円と約101万円も負担増になる。

 

「検査代や通院時の交通費、ウイッグ代なども含めると、さらに負担は膨らみます」(天野さん)

 

女性特有のがんをサポートする会からは、「今回の引き上げは、働く世代の女性に大きな影響が出る」と懸念の声が上がっている。

 

「とくに女性特有のがんは、20~50代の者が多いので、単身、子育て中、シングルマザーなどから、現行でも治療することは経済的にぎりぎりとの声を聞いています。

 

今後は目の前に薬があっても使えないという状況になりかねません」(天野さん)

 

「NPO法人 京都ワーキング・サバイバー」理事長の前田留里さんも「仕事と治療のはざまで悩む女性からの相談が多い」として、こう明かす。

 

「単身・非正規の女性はもちろんのこと、治療のために正社員を辞めてパート勤務に変わったものの、収入が落ちて医療費の支払いが大変という方もいます。

 

今回の自己負担限度額引き上げは、そうしたなかでも踏ん張っている方々を相当厳しい状況に陥れることになります」

 

一方で、家計を支える夫ががんに罹患した場合の経済的打撃も深刻だ。

 

9年前に夫(当時50歳)をスキルス胃がんで亡くした「認定NPO法人希望の会」理事長の轟浩美さんは、こう話す。

 

「スキルス胃がんは若い世代の患者が多く、現行の制度下でも治療費の負担が大きく、家族に申し訳ないという声が多い状況です。

 

引き上げ案を知り『治療を断念し、死を受け入れる』との悲痛な叫びが届き始めています」

 

スキルス胃がんの治療には、オプジーボという免疫チェックポイント阻害剤が使用されることがあるが、これも非常に高額になるという。

 

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