■最期まで家族のような関係で生活することができる
入居者が、要介護や認知症になった場合は、どうなるのか。
「うちには、入居される前から認知症の方もいらっしゃいます。
その方に関しては、たとえばデイサービスの曜日をみんなで共有して、ちがう日に出かけようとしていたら、入居者同士で声がけするなどして生活されています。
また、入居者や地域医療の看護師などでグループLINEをつくり、雑談や日々の困り事なども共有しています」(鮎川さん)
つまり、入居者同士のつながりや地域医療・介護の手も借りながら、最期まで家族のような関係の中で生活できるというわけだ。
「数年前に、ここで入居者の方をお看取りしました」
と話すのは、2015年にオープンした高齢者シェアハウス「むすびの家」(千葉県)のオーナーで住人でもある田中義章さん。
「助け合って暮らせる住宅をつくりたい」と70代で一念発起して建てた。キッチンやバス・トイレは各自室にあり、リビングは共用だ。
家賃は、45,000~60,000円。現在は、田中さんご夫婦含め計8人が入居し、平均年齢は80歳を超える。
「毎朝、みんなで体操をして、午後には一緒にお茶を飲みます。また、定期的に車で買い物にも行きます。以前は、自家菜園などもしていましたが、みんな歳をとりました」(田中さん)
入居者みんなが高齢になるなかで、「どこまで支え合えるか」と、いう懸念はあるという。
シェアハウスで気がかりなのは、入居者同士のトラブルだ。
「1階に住む60代の女性から『2階の足音が気になる』という声もありましたが、入居者同士が親しくなるにつれ、それもなくなりました。『むしろ“孫の足音”のように感じて愛おしい』と、おっしゃっています」(前出・松尾さん)
一般的に多いのは、「掃除の仕方やゴミの出し方にまつわるトラブル」(前出・満田さん)だ。
「『Aさんの掃除はいいかげんだ』『Bさんはゴミの分別をちゃんとしていない』などと、細かい点でいさかいが起こることもあります。
そんなときは、管理人が間に入って、コミュニケーションをはかっているようです」(満田さん)
つまり、少々のトラブルがあっても、話し合って解決する“コミュ力”が問われるというわけだ。
「選び方のポイント」はあるのか。
「事前に交流会などに参加して、自分に合うか雰囲気を確かめておきましょう。また、要介護になっても住み続けられるかという点もチェックしておきたいですね」
入居のしやすさ、生活費などのお得さ、特に人のぬくもりが感じられるシェアハウス。“終の棲家”として選択肢に入れてみてはいかがだろうか?