■避ける―防災は家選びから始まっている
予測ができない地震と違い、台風や大雨による水害、津波、土砂災害は「避ける」ことができる。
「令和2年7月豪雨では球磨川が氾濫し、特別養護老人ホームの入居者14人が犠牲に。この施設はハザードマップ上で、氾濫した水の勢いで建物が倒壊するリスクがある場所に立っていました。とりわけ昨今の水害は、ハザードマップどおりに起きているのです」(高荷さん、以下同)
水害や津波などの被害を予測するハザードマップは自治体のホームページでも入手可能。自宅の災害リスクをまずは知ることだ。
「たとえば水害ハザードマップで色がついている(被害が予想される)エリア内で『2階水没レベル(3?5m)』や『家屋倒壊等氾濫想定区域』で木造住宅の場合は、引っ越しの検討を。また避難が間に合わない恐れがある津波を避けるためには『津波浸水想定区域』には居住しない。家族の命を守るためには大切なことです」
安全な場所への移転が無理ならば、次項以降の「耐える」「逃げる」「しのぐ」を徹底しよう。
■耐える―戸建て住宅は3軒に1軒が大地震で倒壊の恐れ
「日本の建物はそう簡単に崩れない」は迷信。地震大国・ニッポンにおいては、激震の備えとして自宅の安全対策を徹底したい。
「震度7という激しい揺れが2度も襲った熊本地震(2016年)では建物の下敷きになるなどの圧死(直接死)で50人が亡くなりました。実は、多くの高齢者は耐震性の低い家で暮らしているのが現状です。とりわけ、1981年の建築基準法の改正前に建てられた『旧耐震基準』の家は震度6以上の揺れで倒壊の可能性大。熊本地震では震度6を観測したエリアにある旧耐震基準の家の46%が倒壊、崩壊したことがわかっています。
2000年の建築基準法と同じ基準を満たしている家か、『耐震等級3』の家で暮らすことが望ましいです」(高荷さん、以下同)
まずは下の耐震診断セルフチェックで、わが家の強度を確認してみよう。自宅倒壊で圧死する恐れがある場合には、専門家による耐震診断を受けたほうがいい。
とはいえ、地震に弱い家だからといって、おいそれと引っ越しやリフォームなどできないという人はどうすればいいのだろうか?
「旧耐震基準の2階建て住宅は、大地震で1階部分が潰れることがあります。ふだんから2階で生活するだけでも圧死リスクを減らせます。年中過ごすのが不便な場合は、大きな地震があった後の余震警戒時だけでも2階にいてください。旧耐震基準の家の耐震改修工事助成金を出している自治体もあるので、積極的に利用しましょう」
頑丈な家だけでなく、室内の安全対策にも目を配りたいもの。
「意外と盲点ですが、地震による即死のリスクを高めるのが窓ガラスの飛散です。飛散防止フィルムを貼る、就寝時はカーテンやブラインドをするだけでもガラスの飛び散りを防げます。
また家具や家電の転倒は圧死だけでなく、避難が遅れて命を落とす可能性が高まります。転倒した家具が人に直撃しないように置き方に気を配ったうえで、固定することが重要。自治体によっては、ガラス飛散や家具転倒の防止対策をサポートしてくれる支援や補助金があるところも。役所で相談するのも手です」
高齢者のいる家庭は、一部だけでも安全を確保する方法がおすすめ。たとえば、寝ている時間の安全を確保する「防災ベッド」(税別価格40万円)は耐震工事よりもコストがかからないのがポイント。また建物全体をリフォームしなくても一部屋だけ防災シェルターにする「一部屋防災リフォーム」も話題に。どちらも自治体の補助金が出るケースもあるので検討してはどうだろうか。
【INFORMATION】
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