■しのぐ―「トイレ」「オーラルケア」の備えゼロは死を引き寄せる
「避ける」「耐える」「逃げる」の備えができたら、ようやく本格的に避難生活セットの準備だ。ライフラインが止まるほどの大災害では、避難所や在宅避難での生活を「しのぐ」対策をしているかどうかが、高齢者の災害関連死リスクに大きく影響する。
「『災害が起きても、支援物資がすぐに届くだろう』と思っている人が少なくありません。ですが、大災害の後72時間は人命救助が最優先され、生存者の支援は後回しになる傾向にあります。また道路が寸断されている場合には、支援車両を通すにも、破壊された道路の復旧にまず時間を要します。
水、食料だけでなく、停電や断水に備えた道具などの備蓄は『最低3日、できれば7日』を目安に非常用持ち出しセットとは別に、『避難生活セット』として用意しておきましょう。ただし大量の被災者が発生する都市部や、離島・半島など地理的に孤立する可能性のある地域に住んでいる場合は、支援物資が届くのに時間がかかります。これらの地域は、まず『7日分』を見込んでおいたほうがいいでしょう」(高荷さん、以下同)
特に夏・冬の避難生活は、高齢者の命に関わる。季節に合わせた暑さ・寒さ対策のアイテムもしっかり用意しておきたい。
さらに、高齢者の災害関連死を防ぐためのポイントを聞いた。
「まず、持病がある場合は悪化を防ぐこと。薬は十分な量をお薬手帳と一緒に準備しましょう。また、水分摂取を控え、長時間同じ姿勢でいることで起こる『エコノミークラス症候群』や、活動量の低下で筋力や心肺機能が低下する『廃用症候群』は、最悪の場合死に至る、災害関連死の代表。水分摂取と軽い運動を心がけましょう」
断水によりトイレが使えなくなるのは、命に関わる大きな問題だ。
「高齢者はトイレが使用できないと水分補給を控える傾向にあります。非常用トイレには、携帯タイプなどいろいろなものがありますが、洋式トイレにかぶせて使用し、排せつ物を凝固剤で固めるタイプを潤沢に用意することを勧めます。さらには、歯磨きができずに増加した口内細菌による『誤嚥性肺炎』も死を招きます。口腔ケア用品も大事な防災アイテムです」
避難生活での「しのぐ」対策について、ごぼう先生も語る。
「加齢により感覚が衰えると『喉が渇いた』と自分で気づかなくなってしまうケースも。家族が気にかけてこまめな水分補給を促しましょう。また、体力が低下したときには1秒間に『た』を何回言えるかを試してみては。『たたたたた』と5回スムーズに言えない場合は、体力がかなり低下しているサイン。ストレスが多く我慢を強いられる避難生活では、家族の目配りが高齢者の命を救います」
平時から、災害でも家族全員が生き延びるための準備を万全にしておこう。
【INFORMATION】
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