■糖尿病患者の5人に1人が治る!
「全体で100人に1人という寛解発生率は約4万8千人の平均の割合。早期発見して治療を始める、体重を減らすなどの条件が重なった人においては、最高で5人に1人ぐらいの割合で寛解が期待できることが、さらにデータを分析した結果、わかってきました」
“糖尿病患者の5人に1人が治る”と聞けば、運動や食事療法を頑張ろうと思えてくるのではないだろうか。そうして寛解を目指すことは、恐ろしい糖尿病の合併症を防ぐことにもつながる。
「代表的な合併症には、毛細血管の障害が原因となる網膜症や腎症、神経障害があり、失明、人工透析、足の壊疽につながります。突然死を招く心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める動脈硬化も発症しやすくなります。
これらの合併症を引き起こしてしまったら、今の医学でも治すのは困難。できるだけ早期に糖尿病を見つけ、合併症を予防するべく治療を続けるのが、現在の糖尿病医療のスタンダードなのです」
“糖尿病は治る”という驚くべき調査結果は、重い病気が見つかるのが怖くて健康診断を受けなかったり、治療を中断したことにより合併症になってしまう人を減らすことにもなるはずだ。
今回の研究では、寛解した3千677人の追跡調査も実施。1年間寛解を維持した人は1千187人にとどまり、血糖値が上昇して再発した人は2千490人いたという。
「そこが糖尿病治療の難しいところ。“気が緩む”ということもあるでしょう。また、どんな人でも加齢により、血糖値がゆるやかに上昇していくのも影響している可能性があります。
とはいえ、運動や食事といった生活習慣の改善により、一度でも“糖尿病ではない状態”に戻せたことは大きな自信となるはず。その経験をもとにまた頑張ることで、再び寛解する可能性も高くなるでしょう」
治らない病気ではないことがわかったとはいえ、糖尿病に“かかっても大丈夫”という意味では決してない。あくまでも“治せる病気”として、健康診断での“発覚”を恐れず、すでに闘病中の人には“希望”をもって、糖尿病に立ち向かってほしい。